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姉弟間の格差⑥ ~母の対応(声、言葉、パンの耳、映画)~

目次

声のトーンが全く異なる

父と異なり、母は「長男優先」というより、「末っ子がかわいい」という理由で弟を優遇した。

まず、青ねずみと弟ねずみに対する声のトーンがまったく異なっていた。 青ねずみに対しては鋭い低い声だったが、弟ねずみくんに対しては甘い声だった。

母「弟ねずみくぅ~ん!いたの~」
青「青もいるよ」
母「いいから、青はさっさと出かける準備をしなさい!!」

この時、母が弟ねずみの実名の「し」の音を「ち」と発音することも、私は嫌だった。
ちなみに、青ねずみを呼ぶときは、ちゃん付けではなく単に「青ねずみ」と呼び捨てだった。

使う言葉にも差異がある

母自身は意識していなかったようだが、二人に対する言葉の選び方にも違いがあった。 例えば、弟ねずみくんについては
「この子はひとつのものにとことん夢中になるのよねえ」
と目を細めて話す一方で、青ねずみについては
「青ねずみは、のめりこむところがあるから」
と、低い声で眉をひそめて話した。
「夢中」と「のめりこむ」は、似た意味をもつ言葉であるが、母はいつも、弟には「夢中」、青ねずみには「のめりこむ」と使い分けた。 自分に対して「のめりこむ」という言葉を使う時、いつも低い声で苦々しい表情を伴うので、子どもながらに「悪い意味なんだろうな」と感じていた。

下の子のためにパンの耳を切ってあげる

母は、なにかにつけて弟のために尽くし、弟を甘やかした。
弟が6歳頃のこと。母が弟のために食パンの耳を切り落としてあげているのを見たときは驚いた。

青「え!? なんで!?」
母「だって、この子、耳があると食べにくいっていうんだもの」
青「食べられないわけじゃないんでしょ!?」
弟「あると食べにくい」
青「え!?わがままなんじゃないの!?」
母「いいから青は自分のことをちゃんとやりなさい」

まったく意味が分からない。同じ年齢の頃、私はパンの耳なんて切ってもらってなかったぞ。

母は弟だけを映画に連れて行った

映画「北極のムーシカミーシカ」

私が小学校5年生の夏の話。
夏休み前に、母が弟と私に言った、
「いい子にしていたら、夏休み中に二人をこの映画に連れてってあげる」
それは、「北極のムーシカミーシカ」というアニメ映画だった。それまで映画なんて滅多に連れて行ってもらっていなかったので、母からチラシを見せられた私は心が躍った。これは、夏一番の楽しみだ!
弟がいつも私にちょっかいを出したり邪魔をしたりするのは別記事に書いた通りだ。その年の夏も、弟はやりたい放題だった。しかし、私は映画のために歯を食いしばって耐えた。とにかく、いい子にしていないと映画に連れて行ってもらえない。

夏休みが後半になり、だんだんと終わりが近づいてきたが、母は映画に連れて行ってくれる気配がない。私はだんだん焦り始めた。いつまでがんばらないといけないのだろう。もうじき夏休みが終わってしまう・・・

しかし、私が一人で母に催促なんてしたら、叱られるのがおちだ。
「あんたは、自分のことばっかり考えてるわよね」
かなんか言われるにちがいないのだ。 だから、弟と二人で母にお願いしようと思い立った。

青「ねえ、弟ねずみくん、一緒にお母さまにお願いをしよう。この映画、観たいよね。」
弟「別に。」
青「え?どうして!? 映画観たくないの?」
弟「ぼくもう観たもん。」
青「え!?いつ?だれと!?」
弟「この間。お母さんと一緒に。」
青「え・・・・・」

歯を食いしばった、私の一夏はなんだったのだろう。

振り返って思うこと

ずっと後年、私が大人になってから母に問いただしたところによると、その夏、新聞社の景品で、2枚だけ鑑賞券が貰えたのだそうだ。それを使って母と弟が映画を観た。その際、弟には「お姉さんには内緒よ」と言っていたのだそうだ。
後日の母「それをね、弟ねずみくんがうっかり青に話しちゃったのよね。あの子、口が軽いから。」
いやいや、母よ、それはちがうでしょう。弟の落ち度ではありませんよ。
私は最初の約束を今でも鮮明に覚えている、「いい子にしていたら、夏休み中に二人をこの映画に連れてってあげる」と。
2枚しか鑑賞券がなかったのだとしたら、最初の約束の時点で母は故意に嘘をついていたことになる。おそらく、映画で釣って「いい子にさせておく(=家を静かにさせる)」ために。 もしくは、姉弟だけで映画を観に行かせるか、さもなくば1枚を自費で買い足して3人で行くかなど、計画の立てようはあったはずである。

また、仮に映画鑑賞が叶えられたとして、そもそもご褒美で釣る子育てというもの自体どうなのかという話が出てくるのであるが、これはこれで議論が長くなりそうである。機会があれば別の記事にでも。

「公平にやってください」と母に伝える

たまさかに、母がこっそりと何かをくれようとすることがあった。

母「このお菓子、一個しかないから青にあげるわよ。弟ねずみくんには内緒よ。急いで食べちゃいなさい。」

これを聞いて、私は天真爛漫には喜べなかった。
そうか、そうやってるんだ、弟に対しても。
きっと、弟には私の何倍も、こっそりと何かをあげているんだろうな。そうやって、弟のご機嫌を取り、弟を手なずけているのか・・・。
そういうことが透けるようにわかってしまった。
それで、母に断った。

青「そういうのは要らない。」
母「あら、いいじゃない、こっそりあげるんだから貰っときなさいよ。」
青「要らない。よくないと思う。公平にって言うのなら、ちゃんと公平にしないと。」

振り返って思うこと

子どもながらに、よく断ったと思う。
「私にこっそりくれなくていいから、弟にもこっそりあげるのをやめてください」という、静かな絶叫であった。
(相手にどこまで伝わったかはわからないが・・・)

大人は、このような行動が信頼を失墜させていることに自覚すべきである。

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この記事を書いた人

虐待サバイバー医師です。内科医兼精神科医です。医学部再受験の時のことや、自身の歩んできた道、思うことなどを書いていきたいと思っています。

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