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ルールに統一性がないこと② ~弟のザッピングについて~

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弟はリモコンを持ち、テレビのチャンネルを次々と変える

これも別記事で書いたが、私は子ども時代にテレビのチャンネルをいじることを禁止されていた。「子どもがそんなことをするのははしたない」という理由からである。

さて、それから数年後の話。白黒テレビの時代も「100円硬貨を入れるテレビ」の時代も過ぎ(別記事参照)、我が家にリモコン付きのカラーテレビが置かれるようになった。

すると、リモコンが弟の手に握られるようになったのである。握られるというのは、決して文学的な表現ではない。弟は実際に両手にリモコンを持った姿勢でテレビを観るのである。そして、自分の気分に従い、縦横無尽にチャンネルを変える。次に、だんだん意地悪くなってきた弟は、姉に対し嫌がらせのようなチャンネルの変え方をするようになった。例えば、以下のように。

弟ねずみは、リモコンを手に持ちながら、自分のつけた番組を観ている。青ねずみは、さほど興味ないなりに、横で一緒にそれを観ている(というか、青ねずみは自分でチャンネルを変えられないので、家族がつけた番組を一緒に観ることしかできない)。なにかの拍子に青がちょっとしたコメントをする。
青ねずみ「それおもしろいね」
弟ねずみ「は~?」
その瞬間、弟ねずみはチャンネルを変える。

これが繰り返された。ある時は、お笑い芸人のギャグに青ねずみが声を上げて笑った瞬間、弟は無言でじろっと姉に一瞥を投げ、すかさず手元のリモコンでチャンネルを変えた。

私は、なぜ弟にはこんなことが許されているのか、不思議でならなかった。

青「弟ねずみくん、それやめて」
弟「はあ?」
青「観ていて疲れるから、そういうのやめてほしいの。リモコンを置いて。」
弟「はあ? 何言ってんだバーカ」
青「弟ねずみくんだけのテレビじゃないでしょ」
弟「うるせえバーカ」
青「(母に)ねえ、どうして弟ねずみくんを叱らないの?」
母「うるさいわね青は。いいじゃないの、そんなことくらい。」

両親は弟を叱らなかった。

振り返って思うこと

チャンネルを変えることに関してだけでも、姉弟の間にこれだけの違いがあった。
後年になってからも、母の口から「二人同じに育てても性格が違うものね」という台詞を聞いたが、いやいや、どう考えても同じに育てていないでしょう。さらに言うと、そもそも私の目には、両親が弟を育てているように見えなかった。愛玩していただけにしか見えないのである。

弟が姉を小馬鹿にした口調で話すこと(これは、日常的に多くの場面で見られた)も、本来注意されてしかるべき問題である。

両親ともに弟を叱らなかったが、特に父親は、母親にもまして弟を叱らなかった。これは様々な場面において当てはまった。
また、弟も、心得たうえで行動しているように見受けられた。 弟は、父の前では上記のような意地悪をしなかった。例えば、父の好きな大河ドラマの最中は、リモコンを手から離し、行儀よくしていたものだ。自分が叱られないための抜け目のなさがあった。

しかし、上記のようなテレビの観方で、弟自身も本当に番組を楽しめていたのだろうか? いや、集中できていなかったにちがいない。弟の場合は、番組への興味よりも姉への意地悪が優先されていた時点で、かなりの問題である。また、大人が子どものザッピング癖を見たら、何らかの理由がないか注意しておくべきではなかったかと思う。弟ねずみの場合は、ADHD的な要素もあったのかもしれない。

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この記事を書いた人

虐待サバイバー医師です。内科医兼精神科医です。医学部再受験の時のことや、自身の歩んできた道、思うことなどを書いていきたいと思っています。

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